自閉症の子は人の気持ちを察することが難しいと言われたりしますよね。
でも、自閉症の息子はむしろ敏感に感じ取っていると思うことが多いんです。
ただ、自分が人にどう思われているかとか、こんなことしたら恥ずかしいとかの気持ちは育ちにくいようです。
普通なら、育っていく過程に様々な経験をすることで、自然に体得していくものなんですが、自閉症の子には意識して教えないと育ちにくいみたいです。
育ちにくいからこそ育てないといけないと思いました。
実際、恥ずかしいと思う気持ちを持たないまま育った自閉症男子の直視できない姿に遭遇したことがあるので、あんな風に育ってほしくないと強く思ったんです。
そこで、息子には「恥ずかしい」という気持ちを育てるための工夫を日常生活に取り入れていました。
課題学習ではなく、日常生活の中で恥ずかしいと思う心を育てる工夫をしてたんです。
その結果は、完ぺきとは言えないけど、まずまずかな!
恥ずかしい気持ちを持ってほしい場面
人前に出るのが恥ずかしいとか、異性と話すのは恥ずかしいとか、強弱はあっても誰でも恥ずかしい気持ちになることはありますよね。
そんな恥ずかしさはあって当然だし、むしろ持っていてほしいと思います。
恥ずかしい気持ちが育ってなければ、人目も気にせず公衆の面前で着衣を脱いでしまったりすることもあります。
小さい子どもなら周囲もなんとも思わないでしょうけど、大人になってそんなことしたら犯罪ですよね。
でも、息子が4歳くらいまで、そこまでの考えには至りませんでした。
息子は3人目の子供だったから、子どもってそんなものだ、大きくなればちゃんとできると思っていたんです。
息子には恥ずかしい気持ちを教えておかなければいけないと知ったのは、自閉症の息子を育てたお母さんの子育てのことが書かれた書籍を読んだ時でした。
直視できない場面に遭遇!
息子の恥ずかしい気持ちを育てるべく、試行錯誤している最中に、もう絶対にやり遂げなきゃと奮い立たせてくれる場面に遭遇しました。
スイミングスクールの更衣室で!
息子が通っていたスイミングスクールの更衣室でも出来事でした。
就学前の3歳~5歳のクラスの中で、1コースだけ障がい児対象のクラスが設けられていたので、息子は5歳のときから小学校6年生まで通っていました。
この障がい児対象のクラスには、年齢の上限はなかったので、中学生や高校生もいました。
息子が通い始めて間もない頃のことです。
5歳の息子は、まだ一人で着替えができなかったので、更衣室に付き添っていたんですが、年長者のお母さんたちは、付き添ってなかったんです。
息子より6歳年上の自閉症の男子も自分で着替えができるので、一人で更衣室を利用していたんですが・・・。
その着替え方が問題だったんです。
巻きタオルなどで身体を隠すことなく、着衣を全部脱ぎ捨てて水着を履いていました。
この時間帯のスイミングクラスは、幼児クラスだったので更衣室は小さい男の子ばかりです。
ワンパクな子もいて、何も身に着けていない年長者の男子を見て、指さしながら囃し立てていたんです。
それでも、どうすればいいか分からずウロウロしているだけで、その後も身体を隠すことなく着替えをしていました。
知り合ったばかりで、しかも先輩お母さんに言いにくかったんですが、更衣室での状態をお話ししました。
それで、お母さんが何度か付き添っていたんですが、お母さんの指示があればできるんですが、お母さんが付き添わなくなると、できなくなっていました。
指示すればできるけど、指示する人がいなくなるとできないのは、なぜそうしなければいけないのか分かっていないから、恥ずかしい気持ちがないからですよね。
なので、息子には恥ずかしい気持ちを持たせたいと思いました。
あり得ない母子関係!
息子が小学2年生ころ、自閉症協会のサマーキャンプに参加していたときのことです。
体育館活動があったので行ってみると、体育館前のベンチに仲良さそうに座っている親子がいました。
息子さんは中学生くらいで、お母さんとベッタリって感じだったんです。
私なら、息子があれくらいの年齢になったら、もうちょっと距離をおきたいなと思っていたその時、いきなり母子でキス!
唖然としてしまいました。
人前でキスをする習慣がない日本で、しかも親子で、ショッキングな光景でした。
親にも子にも、人に見られて恥ずかしい気持ちがないように見受けました。
そして、あんな親子にはなりたくないって思ったんです。
日常生活での取り組み
恥ずかしい気持ちを教えないといけないと分かっても、気持ちを教えるなんて難しいですよね。
先日、NHKの番組で、子どもには「水着で隠れるところは人に見せない。」と、教えると分かりやすいと言っていました。
「なるほど!」と、思ったんですが、それでも自閉症の息子に理解させるのは難しいだろうと思いました。
なので、行動で教えたんです。
着替えコーナーを作る
衣服を脱ぐのは、お風呂に入るときや着替えをするときなので、家庭の中に着替えコーナーを作りました。
子ども専用の個室があるなら、自室で着替えでも良いのですが、幼少期の息子に個室はなかったので、リビングの隅にカーテンで仕切って着替えコーナーを作ったんです。
まだ、一人で着替えができるようになっていなかった時期なので、私も一緒に入って着替えの補助をしました。
リビングを着替えのときだけカーテンで仕切って着替えコーナーにしたことで、着替えは隠れてするものだと分かりやすかったように思います。
もちろん、すぐに理解できたわけではなく、服を脱ぎそうになった彼に「そんなとこで脱いだら恥ずかしいよ。着替えはココ!」と、カーテンの中に引っ張り込んでました。
着替えは毎日、最低2回はするので、繰り返し練習することで理解するようになっていったんです。
家族の協力
人前で服を脱がないことは、家族も同様です。
息子には着替えコーナーでするように指示しているのに、他の家族が彼の目の前で着替えていたら、混乱しますよね。
特に、歳があまり変わらない姉たちが、どこでもここでも着替えをしていたら、息子には何のための着替えコーナーが理解できないと思ったんです。
彼以外の家族は、着替えコーナーを利用することはなかったんですが、部屋の戸を閉めて着替えるなどで、人前で着替えをしないようにしたんです。
もし、着替え中に息子が部屋に入ってきたら、「きゃっ!着替え中です。恥ずかしいから閉めて!」と、オーバー気味のリアクションで対応したんです。
その甲斐あってか、今でも家族が洗面所で着替えしてると知らずに、戸を開けてしまったら、「あっ!失礼しました!」と、目を覆いながら慌てて戸を閉めています。
学校でも
学校でも体操服に着替えますから、更衣室が欲しいところですが、各教室に更衣室なんてないですよね。
男子と女子で、着替え時間をずらして教室で着替えるくらいでしょうか。
息子が小学性のときは、校区の特殊学級(現特別支援学級)でした。
着替えは、パーテーションで区切った着替えコーナーですることになっていて、男子と女子が交代で使っていました。
教室に空きスペースがあったから着替えコーナーが取れたんだと思いますが、それよりなにより、担任が将来を見据えた身辺自立の指導が必要と考えてくださってたからなんです。
教室に着替えコーナーがなかったら、作ってもらうようにお願いしようと思っていたんですが、先生の考え方と合致していたのでラッキーでした。
まとめ
自閉症の息子に「恥ずかしい」という気持ちを育てた取り組み、いかがでしたか?
恥ずかしいという感情が育ったかどうかは不確かですが、着替えのマナーを教えたことで、人前で着衣を脱いだりするような問題は起こっていません。
問題が起こってないというか、恥ずかしいと思うような場面に遭遇したら、「あっ!失礼しました!」と、目を覆ったりしています。
気持ちを教えるのは難しくても、行動なら何度も繰り返して教えることで、身に着けさせることができます。
今も交流している大人の自閉症者の方たちも、着替えは更衣室でするなどできている人が殆どなので、自然に体得していくものなのかもしれませんが・・・。
息子は、教えていなかったらできるようになってなかったかもしれません。
自閉症の息子は、見聞きして真似て学習していくことが苦手なので、もしものことを想定して、少し丁寧な子育てが必要だったと思います。
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