自閉症の息子は苦手なことが多いのですが、特に言葉の理解は困難なことが多かったです。
息子の発語は4歳ころでした。
小学1年生になっても二語文程度で、日常生活に関係した言葉に限られていました。
当時の彼の話し言葉は、聞きなれた家族には分かるけど、慣れていない人には通じなかったと思います。
現在は、会話でコミュニケーションが取れるまでになっていますが、長文の理解は難しいので、複数のことを一文で伝えることはできません。
また、言葉の理解にズレもあります。そのズレに気付かされたのは、彼が小学4年生のときでした。
息子の言葉の理解力にズレがあることに気付いたことで、どうして落ち着かないんだろうと思っていた行動も理解できました。
今回は、そんな息子の言葉の理解のズレに気付いた結果どうだったか書いています。
自閉症の息子の方が理論的だった?
息子の言葉の理解力を知ると、日本語の曖昧さがつくづく難しいなぁと思います。
私たちが普通に理解している言葉の使い方が、融通が利かない息子にとってはとても難しいことだったんです。
課題学習をしていたときの出来事でした。
私:水曜日の前の日は何曜日ですか?
彼:木曜日です。
何度尋ねても答えは「水曜日の前日は木曜日」でした。
そこで、問い方を変えてみると
私:水曜日の後の日は何曜日ですか?
彼:火曜日です。
息子の回答は、一般常識からすると不正解ですよね。
でも、これは息子が理論的な考えから出した答えでして、正解でもあるんです。
なんで理論的なのか分かりますか?
実は、息子にとって「前」は前進、未来のこと、「後」は後退、過去のことだったんです。
だから、水曜日の前の日は木曜日になるんですよね。
このことを知ったのは彼が小学4年生のときで、言葉の理解にズレがあったから混乱してたんだなと分かったんです。
つもりの違いが生じてしまう
言葉の理解のズレから生じた彼の理論からすると、前日は未来のこと、後日は過去のことだったんです。
前と後の解釈にズレが!
息子にとって、前後は位置で使うときと同じ解釈だったということを知ったときには、ちょっとした衝撃でした。
「なんでこんなことが分からないんだろう?」という思いが、「なるほど、文字の意味からすると彼の方が理論的だ!賢いね。」に変わりました。
でも、一般的には前後を時間で使うときは、前は過去、後は未来です。
日常会話でよく使う「あとで」も、息子にとっては「過去のこと」だったので、待たせるときに「あとで」を使うと混乱していたんだろうと思います。
例えば・・・
彼がしたいことがあったときのこと
彼:「〇〇していいですか?」
私:「あとでね。」
彼:「〇〇していいですか?」
私:「だから、今△△してるからあとでね。」
彼:怒り出す。
「あとで」は彼にとって終わったことなので、「ダメ」と同じことだったのでしょう。
言葉の理解にズレがあったことに気付いてなかったときは、待てない子、我慢できない子のレッテルを貼っていたんです。
曖昧な日本語をどう教える?
息子に言葉を教えていると、日本語は曖昧な表現が多いことに気付かされます。
彼がどんな風に理解しているのか探りながら、一つひとつ教え方を工夫していくことが必要でした。
息子は聴覚より視覚の方が強かったので、「前日」「後日」などの言葉は、カレンダーで確認させながら教えてみることにしました。
分かりやすい表現を使う
「前日」「後日」「2日後」「3日前」などの表現は、教えても教えても彼には理解が難しかったです。
理解できないことは仕方ないので、「10月3日」のように確実な日付を使うなど、彼に分かりやすい表現を使うことも一つの方法でした。
誤解されることもある
言葉の理解にズレがあることで、息子は誤解されることもあると思います。
簡単な日常会話は成り立つようになりましたから、一見普通に見えますし、指示したことを理解してできると思われがちなんです。
でも、理解できてないことも多くて、言われたことに応じることができないこともあります。
すると、息子のことをよく知らない人に、「できるくせにやらないやつ」「いい加減なやつ」だと誤解されてしまうんです。
言葉の理解力には限界があった
言葉を理解したり、言葉で表現することは、息子にとって一番難しいことです。
言葉は、教えても教えても習得しにくかったので、彼に分かるようにと課題の工夫をしながら言葉学習に一番力を入れていました。
でも、言葉の壁は厚くて、限界がありました。
3歳頃の息子の訓練をしてくださっていた先生は、彼と会話ができるようになるとは思っていなかったそうなので、限界はあってもよく育ったと思っています。
支援してもらいやすいこともある
息子の言葉学習は、学校生活の終了と共に終わりにしました。
彼の会話力は、あいさつしたり、ひと言ふた言会話するくらいなら、初対面の人でも違和感がないかもしれません。
でも、少し長い文章で話しかけたり、数分会話したりすると、どこか変なんかズレてると気付くと思います。
相手に通じず、どう説明しようかと困ってしまい支離滅裂な言葉になっていることもあります。
そんな状態なので、逆に「支援が必要な人」と判断してもらいやすいともいえます。
まとめ
自閉症の息子には言葉の理解にズレがあり、そのため「つもりの違い」がありました。
日本語には曖昧さがあるので、息子のように言葉の理解力が弱い自閉症の人にとっては、一般的に通用している表現を逆に捉えていることもあります。
そんな分かり辛さに気付くことができれば、落ち着かない、抵抗するなどの行動の原因が分かり、行動を整える方法も見つかります。
いつも上手くいくわけではないですが、柔軟な視点で対応することが大切ですね。