息子の自閉症療育の最大の目標は、可能な限り自由に生きることでした。
地域で働き、家族と共に暮らしながら、楽しむことを持って生活できることです。
そのために、小さい頃から取り組んでおくことは何だろうか?と、彼が困難とすることにぶつかりながら、ひとつずつ乗り越えていくようにしていたのです。
もちろん、限界はあります。でも、やってみないと分からないでしょ。
彼に対して親切すぎると彼からの問題提起がないので、「彼を困らせることは何だろうか?」と、いつも探していたように思います。
自閉症の息子を育てていくときの私は、意地悪母さんだったのです。
そんな意地悪母さんが、これだけはやっておかなければ彼が自由になれないと思い、取り組んだことをお話しします。
ひとり外出訓練は登下校訓練から始めた
自閉症の息子ができるだけ自由に生きるためには、彼一人で行動できることを増やしてやることが欠かせないと思いました。
一人で自分が行きたいところへ外出できるようにしておくことで、自由な世界が広がると思い、外出訓練をすることにしたのです。
外出訓練の第一歩は、小学校時代の登下校です。
自宅から小学校まで2.2kmほどあったので、車で送迎する方が私にとっては楽だったんですよね。
でも、送迎していたら、いつまで経っても送迎なしではどこにも行けないじゃないですか。
なので、彼と一緒に歩いて登下校することにしたのです。
教室まで付き添うことから始め、彼と別れる地点や出会う地点を少しずつ距離を延しながら、約2年ほどの期間を経て一人で登下校できるようになりました。
ほんの5分ほどのすれ違いで大失敗して、振り出しに戻ったこともありましたよ。
車を傘で叩いてへこましてしまい弁償事件になったこと、カーブミラーを割って帰ったことなど色々とトラブルもありました。
具体的な登下校訓練は、別記事で書こうと思っています。
公共の交通機関を利用する
自閉症の息子が、将来的に運転免許証を取得するのは不可能だと思いました。
自閉症でも運転免許証を取得している人もいます。実際、免許を取って車で通勤している息子の同級生もいます。
でも、成人した息子は、運転免許証が取得できるまでにはなりませんでした。
小学生の頃に療育センターでも無理と言われていたんです。
なので、息子には公共の交通機関を利用することを教えることにしたのです。
しかし、田舎なので利用する機会が少ないんですよね。
小学校は当然のごとく徒歩通学ですから、日常的に公共の交通機関を利用する機会はありませんでした。
なので、練習できたのは休日くらいです。
彼と行動を共にしながら、切符の買い方、改札、車内でのマナーなどを教えながら、少しずつ彼との距離を離していったのです。
初めて彼一人で電車に乗せたときは、無事帰ってくるだろうかとハラハラしました。
電車で2駅の駅前にある理髪店へ散髪に行かせたのです。
小学校4年生のときでした。
それまでに、私が付き添って行くことを何度も練習してからですが、散髪は月1回程度なので、定着しているかどうかが不安でした。
理髪店の店主が父親の友人だったので、彼が着いたら連絡してもらうようにしていました。
様子を見に行きたくて仕方なかったのですが、我慢してドキドキしながら待っていたのです。
「今帰ったよ。」と、理髪店から連絡があって30分くらいして無事帰宅してきました。
「一人で行けたね!」に、彼は誇らしげな顔をしていました。
思春期になって母親から離れ一人で行動したくなった時に、彼を信頼して送り出せるように、小学生時代にできることをしておきたかったのです。
一人外出に必要なことを教える
一人で外出させるとなると、交通機関の利用の他にも教えることがたくさんあります。
お金の使い方、時計の見方、社会的なマナー、困ったときに誰かに尋ねることなど、細かく拾うとキリがないくらいあります。
すごく時間かかったし、今でも完璧じゃありません。
全部できるようになるのを待っていたら、いつまで経っても外出訓練はできません。
ですから、外出訓練で問題にぶつかりながら、家庭学習で基礎的な部分を教えては外出訓練で試すことを繰り返していました。
彼が行き慣れた場所なら、一人で出かけられるようになったのは中学生になってからです。
初めての場所へは、今でも地図や時刻表などを調べて行くことはできません。
事前に一緒に出かけて行き方を教えることは外せないのです。
今の彼がよく行く所は数か所に限定されています。交通手段は自転車と電車です。
映画館、ショッピングモール、プール、体育館、本屋などで、休日の楽しみの一つが好きな所へ行って、買い物、食事、運動、映画などを一人で楽しんでいます。
冗談で「一緒に行こうかな。」と言うと「けっこうです。」と断られます。
携帯電話が外出訓練に役立った
中学生になってから、彼に携帯電話を持たせました。
自閉症の息子さんを電車通学させていた先輩お母さんに、携帯電話で連絡を取るようにしていると教わったからです。
一人で外出したときには、「今着いたよ。」「これから帰るよ。」と、連絡を入れさせるようにしたのです。
携帯を持たせたことで、行動範囲が広がったんです。
GPS機能を使うようなことは一度もなかったのですが、居場所確認のためにGPSを利用しているお母さんもいましたね。
携帯電話を持たせたことで、彼にも私にも連絡が取れるという安心感があり、外出することが多くなっていったのです。
一人で外出することが多くなると、トラブルも多くなっていきましたが、その度に対策を考えて教えていくことで、さらに行動範囲が広がっていきました。
携帯電話はリスクもある
自閉症の息子に携帯を持たせたときは、まだガラケーの時代でした。
インターネットはフィルタリング制限をかけて、有害サイトをブロックするようにしていました。
でも、完ぺきではないと思い、メール機能は使わず電話専用にしてました。
電話しか使わなかったので、インターネット経由のトラブルに巻き込まれることはなかったのです。
今も連絡手段は電話だけ、彼とはメールやLINEは使っていません。
成人してから、スマートフォンに変えてからもフィルタリング制限をかけていましたが、完全にブロックはできませんね。
ゲームの動画サイトを見ていたときにクリックしたらしく、高額な費用を払えと警告が出て、慌てて電話してしまったことがありました。
警察に相談したり、ドコモショップで電話番号を変更したり、ちょっとした騒動になりましたが、不当請求の対処はできました。
「もう懲り懲りだ。気をつけるよ。」と反省しているようですが、時々、携帯の請求書が届いたかどうか気にしているときがあるので、怪しい限りです。
もう、29歳にもなる成人男性なので、スマホを取り上げるようなことはできません。
親のスマホでアクセス制限ができると安心
スマホを持たせていると、息子が一人で外出するときに安心なのですが、インターネットを通してトラブルもあります。
自閉症の子にスマホを持たせるかどうか、迷うところだと思います。
インターネットに弱い子供やお年寄りが安心して使えるスマホが登場していますね。
親のスマホと連携して使えるとのことで、子供のスマホのアクセス制限を親のスマホからできるのだそう。
インターネット経由の犯罪が増えているので、親のスマホでコントロールできる端末だと、安心して外出訓練に使うことができますよね。
まとめ
自閉症の息子は話し言葉を持っていますが、状況説明をするのは難しいです。
外出先でトラブルがあったときに、自分で対処できないことも多く、誰かに尋ねたり、助けてもらったりしていると思います。
でも、いつまでも母親がベッタリと寄り添って行動することはできないので、彼を信じて「行ってらっしゃい。」と、送り出しています。
自閉症の子も、いつかは親離れしていきます。特に、男の子が母親から離れる時期は女の子より早いと思います。
子供が親離れしようとしているときに、親も子供を信じて子離れできるようになっていたいですね。
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