自閉症の息子を幼稚園に通わせてみたい。でも、転園するまでの勇気はありませんでした。
そうだ!週1回の通園をお願いしてみよう。
子どもの集団の中に入れてみたら成長するかもしれないと思うことありますよね。
保育所に入れてみて失敗した経験がありながらも、なぜ幼稚園に通わせたかったのか、その結果どうだったのかをお話しします。
なぜ幼稚園に通わせたかったのか
私が、「自閉症の息子に幼稚園の環境を与えてみたら良いかもしれない!」と、考えるようになったのは、校区の特殊学級(現特別支援学級)への就学を決めたからでした。
息子を幼稚園に通わせたかったのは、以下の理由です。
- 校区の同級生に息子を知ってもらいたい
- 当たり前の環境で育つかもしれない
息子の小学校就学先を、養護学校(現特別支援学校)にするか、校区の特殊学級(現特別支援学級)にするか、とても悩みました。
悩んだ末に、将来、地域で生活していくには地域の人に知ってもらうのが一番と考え、校区の特殊学級に就学させようと決めました。
それなら、同級生の子供たちと一緒に遊べる環境を与えられないものかと思ったのです。
また、5歳になった息子は、日常的な言葉を少し理解するようになり、指示に従えることもでき始めたので、同年齢の子どもをお手本に成長するかもしれないと考えました。
しかし、理解力が育ち始めたといっても僅かで、療育施設を退園して幼稚園に転園するまでの発達段階ではありませんでした。
3歳児のときに保育所に入所させて失敗した経験があったので、幼稚園だけにする勇気もなかったし、入園の受け入れも無理だろうと思ったんです。
そして、思いついたのが、保育所に通園しながら療育施設に母子通園していたときと、逆のことができないかということだったのです。
幼稚園に週一回の通園をお願いしてみた
校区の小学校へ就学する子どもが通園している幼稚園に、週一回の母子通園をお願いしてみることにしました。
私の同級生が主任保母をしていたということもあって、お願いしやすかったという好条件もあったのです。
Nさんにお願いしてみよう。
しかし、市立幼稚園だったので行政的な制約があり、幼稚園の判断だけで受け入れることはできないという結果になりました。
幼稚園や療育施設は国の補助金で運営しているため、2ヶ所に籍を置くと二重に補助を受けることになるので、正式に受け入れるのは無理ということでした。
やっぱり無理なのか。
期待していたのですが、諦めるしかないと思っていたんです。
でも、持つべきは友ですね。主任保母をしていた友人の働きかけで、行政の補助金に依存しない母子見学ということで、毎週土曜日に通わせてもらえるようになったのです。
母子見学なので、私も常に一緒に行くことが条件です。
息子に幼稚園の環境を与えてみた結果
自閉症の息子に幼稚園の環境を与えてみた結果、どうなったかというと。
- 友達の真似をしてできることがあった
- 同級生の子どもに息子を知ってもらえた
- 私が子どもたちと仲良しになれた
- お母さんたちに息子を知ってもらえた
一番印象に残ったのは、秋の運動会でした。
運動会に参加させてみないかとお誘いがあり、参加することになったのですが、私が付き添わなければ大騒ぎになるかもしれない、と、思っていたのです。
でも、「お母さんは見ていてください。大丈夫だから。」と、母子見学のクラス担任が彼を引き受けてくれたのです。
そして、なんと、先生に補助されながらですが、あまり目立つことなく、かけっこやダンスをすることができたんですよ。
目立つことなくできたことは、集団の中で同じ行動ができたということで、息子にとって凄い成長だったんです。
同時期に、療育施設でも運動会があったのですが、息子はウロウロしながら喚いていたり、競技を理解してなくてできなかったりだったんです。
この違いはなんだろう。
幼稚園ではできたのに、療育施設では幼稚園の競技より簡単なことがなぜできないんだろう。
その理由はすぐに分かりました。幼稚園ではルールを守って競技をする園児たちのお手本がたくさんありました。
療育施設の園児は、全員が知的障害を持っているので、お手本は先生だけで、子どもたちは、自由気ままにウロウロしてたり、泣いていたりで騒然としてたんです。
与える環境次第で、息子は成長できることを確信できた出来事でした。
同じ小学校に行く子どもたちに、息子を知ってもらえたのも、大きな成果でした。
息子は校区の特殊学級に就学しましたが、体育や音楽など一部の授業を親学級で一緒に受けたり、給食を親学級で食べたりします。
幼稚園時代に週一回でも一緒に過ごした子どもたちの中には、お世話好きな子もいて、彼を助けてくれました。
息子のクラスに遊びにきたりと、関わってくれました。
また、息子の同級生と私が仲良しになれたことも大きかったです。
先生ではない大人が幼稚園に居ることが珍しかったのか、「おばちゃんあそぼ!」と、子どもたちに誘われて、一緒に砂場あそびなんかをよくやりました。
小学生になってからも、学年下校などで子どもたちと一緒になることが多く、「K子ちゃん、ここまで一緒に連れて帰ってくれる?」なんてお願いもできたんです。
「今日ね、S君こんなことしてたよ。」と、報告してくれることもありました。
同級生のお母さんたちに、息子のことを知ってもらえたのも良かったです。地域で生活させようと思えば、周囲の理解や助けが必要なこともあり、実際、気にかけてくれたのです。
それは、息子が大人になった今も続いています。
「S君仕事がんばってるね。」「この間、S君に会ったよ。」などなど、お母さん方が、今でも気にかけて見守ってくれています。
就学前の一年間、地域の幼稚園で当たり前の環境を体験できたことは、息子の成長や周囲の理解を深めるために有意義なことでした。
まとめ
療育施設に籍を置きながら、地域の幼稚園へ、週一回の母子見学ができたのは、好条件が揃ったことや、友人の力添えがあって実現したことかもしれません。
少し指示が通り始めた息子に、お手本がいっぱいある幼稚園の集団を与えてみたら、周囲を見真似てできることが分かりました。
我が子の状態を観察しながら判断してのことになりますが、良いかもしれないと思ったことは、やってみる価値はあると実感しました。
就学前、小学校、中学、高校、学校卒業後と、進路選択を迫られますが、知的障害を伴う自閉症の子は、自分で選ぶことは難しいのです。
どんな環境を与えるのが良いか、進路が変わるたびに悩みの種になりますが、将来を見据えて、今一番必要と思える環境を親の判断で選ぶ責任があります。