「お母さん時間です!」と、言葉で伝えることができないTさんが机をガタガタし始めた。
あれ?どうしたんだろう?
Tさんいつもと違う・・・
自閉症療育に熱心なお母さんほど、予定表を組んでキッチリとしつけをしています。
日常生活をスケジュール化してやることで、本人も家族も過ごしやすくなるので、毎日決まった日常パターンを入れることが多いのです。
でも、時間通りキッチリやりすぎると思わぬ落とし穴があるんです。
今回は、そんな自閉症の時間へのこだわり例や、こだわりを柔軟にしていく育て方についてお話しします。
過ごしやすさの工夫が裏目に出たこだわり例
自分なりの日常的なスケジュールは、障害があるなしに関係なく誰にもあると思います。
特に、自閉症の子には先の予定を知らせておくことで、不安がなくなり癇癪を起したり、パニックになったりすることも軽減できるのです。
スケジュール表を理解するまでに時間がかかりますが、「あっ、そうか!」と、理解したら色んなことがやりやすくなるし、本人の不安もなくなるんです。
誰でも、予定が分からないことって不安ですよね。自閉症の子も同じなんです。
でも、キッチリやりすぎると、裏目に出ることがあります。そんなこだわり例を紹介します。
お母さん時間です
某支援プログラムで一緒に活動しているTさんのお母さんは、子育てにとても熱心な方で、Tさんは重度の自閉症でしたが、とても穏やかで几帳面な人に育っていました。
ミーティングなどの時に、お母さんに同行してくることも多く、後ろの席で静かに過ごしていました。
ある日、午後1~5時の予定で打ち合わせをしていたときのことです。2時間ほど静かにしていたTさんが、「あー、うー」と、声を出し始め、机をガタガタさせ始めたんです。
あれ?どうしたんだろう?
振り返ってみると、お母さんが駆け寄って、飲み物とお菓子を与えていました。
時間は午後3時でした。
Tさんのお母さんは療育にも熱心な方で、Tさんが少しでも過ごしやすいようにと、1日の予定を忠実に守った生活で彼の平穏な日常を守っていたんです。
Tさんにとって、3時はおやつの時間。それは大人になった今でも、どんなときにも譲れないスケジュールだったのです。
5時に会議が終わると、Tさん親子は急いで帰りました。なぜかというと、夕飯の時間が6時と決まっていたからなんです。
良いと思って入れたスケジュールが足かせになってしまったことを後悔していました。
でも、小さいときからキッチリ入ったTさんの予定表は、大人になってから変更するのは難しくなっていたのだそうです。
予定変更に大抵抗していた息子への対策
私の息子の家庭療育でもスケジュールが大いに役立っていて、様々な予定表を使いながら、約束は守るものだと、繰り返し教えていました。
日常生活をスケジュール表でこなしていく
自閉症の息子に家庭療育をする中で、色んな場面に合わせて予定表を使っていました。
その中の一つに、彼の1日のスケジュールを決めた、壁掛けカード式スケジュール表がありました。
写真写りが悪いですが、息子が小学生の低学年ころに使っていた、彼専用のスケジュールです。
壁掛け時計のすぐ下に、こんな予定表を吊り下げて、時計と時計カードのマッチングで、時間を入れた1日のスケジュールを繰り返し教えていました。
やることは毎日同じで、やり終わったカードを裏返していくことで、教えていたんです。
このスケジュールを息子に理解させるには、決めた時間に決めたことを必ずすることで、理解させていくしかなかったので、時間に縛られる窮屈さはありました。
ルールを理解するまで、絶対に約束は破っちゃいけないんです。理解するまで半年以上かかったと記憶しています。
でも、息子がスケジュールを理解したころに問題が起こりました。
どうしても、予定変更をしないといけない事が出来てしまって、中止になったスケジュールができたんです。
決めたことは守る約束だったので、息子は大騒ぎになりました。パニックと言われるような状態ですが、彼が悪いわけではありません。
私の教え方が悪かったんです。
時間のこだわりを柔軟にしていく対策
スケジュールを理解した息子への課題は、次の段階に進む必要がありました。
その対策は以下の2つです。
- 予定がない時間を入れる
- 予定変更を入れる
まず、何も予定がない時間を白紙カードでスケジュールに入れました。
真っ白のカードがスケジュール表に入ったときは、大騒ぎすることはなかったですが、「ここは?ここは?」と、気にしていました。
好きなことをして良い自由時間なんだと分かると、白紙カードを好むようになりましたよ。
そして、次は、予定変更です。
家事手伝いなどの変更になったら嬉しい予定や、日常習慣の予定は変えずに、彼が楽しみにしていたことを中止にしていくんです。
彼の予定表は、カレンダーに書き込む日々予定表もあって、お出かけなどのイベント予定を書いていたんです。
1日の壁掛けスケジュール表は、前日の夜か当日の朝に予定を入れていたので、彼は、私に時間を聞いて、自分で「お出かけカード」を入れていました。
それを予定時間の少し前に急きょ中止にするんです。意地悪ですよね。
初めの頃は、彼はもちろん、泣きわめいて怒りましたよ。でも、中止にしたことは譲らず納得させます。
予定変更は、毎日はやらないですが、時々突発的に入れ込んでいくことで、大騒ぎから文句になり、最後には「しかたないや」、と諦めるようになりました。
自閉症療育は締めたり緩めたりが必要
息子との向き合い方が分かり、真の自閉症療育に取り組めたのは、彼が小学校1年生のときからでした。
ひとつのことを理解させるのに、とても時間がかかる子でしたが、スケジュールの例のように、一定のパターンでキッチリ教えるやり方が一番教えやすかったです。
ただし、いつまでもそのパターンを続けていると、パターンからはみ出ることに大抵抗するんです。
なので、理解したらパターン崩しで緩めていく必要があったんです。
自閉症療育は、締めたり緩めたりが絶対に必要だと、彼を育てていて強く感じました。
まとめ
今回の自閉症のこだわり例はいかがだったでしょうか?
なるほど!と思ってもらえることがあれば嬉しいです。
息子との取り組みを、サラッと書いていますが、実際には上手くいかないときの方が多く、根負けしてしまいそうなときもありました。
でもね、彼が将来、少しでも自由に外の世界で楽しみながら過ごせるように、今が大変でもやらなきゃいけないんだと、歯を食いしばってやってきました。
今の息子だけを見た人に、「S君はできる子だったからよ!」って言われることもありますけど、けっこう彼とのバトルを繰り広げていたんですよ。
幼少期に、息子の訓練を担当していた感覚統合の先生は、彼が話せるようになって就職できるなんて思ってなかったそうです。
私が、「お母さん」と、彼から呼ばれることさえないと思ってらしたそうです。
一言に自閉症と言っても、みんな違いますから、私の取り組みが正解とは言えませんが、少しでも参考になれば嬉しいです。
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